「南京大虐殺の史実展」より

 

 『南京大虐殺の史実展』(日本語版)(主編・張建軍、南京出版社、2019年11月)の第7章「戦後の調査と裁判」より91~101ページの部分を、侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館(南京大虐殺記念館)のご厚意によって転載いたしました(下記の画像11点)。

 

 南京大虐殺は東京裁判において内外に<最大の衝撃>を与えた事件ですが、この事件では東京裁判と並行して南京の国防部軍事法廷でも、BC級被告として谷寿夫中将以下4名が裁かれました。

 

 近年、南京大虐殺の犠牲者数(約30万人)に関して日本の一部の人々から疑義が唱えられています。また、その疑義を鵜呑みにして信じる人々も多いようです。しかし、この数字の出処がこの南京軍事法廷判決書(下記の画像10「戦犯・谷寿夫に対する判決書(抜粋)」参照)であるという基本的な事実は正確に認識されていないように思われます。ちなみに、東京裁判判決書の犠牲者数は、約20万人(下記の画像7「極東国際軍事裁判所判決書の中、「南京暴行」に関する記述(抜粋)」参照)でした。

 

 実際の犠牲者数がどれだけであったか。現在、残された乏しい第一次史料だけでは、誰も正確な数を確定することは不可能です。もちろん、新資料が出現すれば、新たな展開もあるかもしれません。しかし、いずれにせよ、約30万人という数字が南京軍事法廷判決における公的記録であること、そして、日本政府はサンフランシスコ平和条約締結においてその判決を受諾したこと、この二点だけは、この問題に関する基本的前提として冷静に確認しておく必要があるでしょう。

 

 この展示は、侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館において2017年12月13日から始まり、現在も公開中です。同紀念館の芦鵬氏より簡潔な解説文をいただいたので、以下、ご紹介いたします。

 

 

1)展示の趣旨

 展示の趣旨は、『南京大虐殺の史実展』の「まえがき」より抜粋すると、次のようになります。

「19 世紀の後半、日本は一歩一歩と軍国主義の道を歩んでゆき、繰り返して対中侵略戦争を起こし、数えきれない戦争の罪を犯した。1931 年に、日本(の関東軍)は計画どおりに「満州事変」をつくり、局地的対中侵略戦争を起こした。ついに 1937 年 7 月 7 日に、日本はさらに全面的対中侵略戦争を起こした。同年 12 月 13 日に、南京に侵入した日本軍は、公然と国際法に違反して、ほしいままに虐殺・強姦・略奪・放火を実施した。この南京大虐殺惨烈事件は、中国内外を驚かした。同事件で、南京の三分の一ほどの建物は破壊に遭われ、大量の財物は略奪に遭われ、数えきれない婦人は蹂躙と残害に遭われ、数えきれない児童は非命に死なれた。同事件の死難者総人数でいえば、戦後の戦犯裁判中国軍事法廷によれば、なんと 30 万人以上にも達した。南京大虐殺惨烈事件は対中侵略戦争期の日本軍が犯した数えきれない諸暴行事件では一番代表的な一例であって、世間の見聞を驚かした反人類の罪であり、人類史上の暗黒の一頁でもあった。本展示の旨は、南京大虐殺という悲惨で痛烈な歴史を銘記し、無辜な死難者たちを記念し、平和的発展道をちっとも移さずに歩んでゆきたいという中国人民の願望と決心を伝え、歴史を銘記し、過去を忘れず、平和を愛護し、未来を開拓す、という中国人民の固い立場を宣布したい、というところにある」。

 

2)展示の主題、見どころ、展示品

 第一に、展示の主題は、二つあります。一つは犠牲者への追悼、もう一つは歴史の再現です。

 第二に、見どころは、空間のデザインです。例えば入口の資料の壁、歴史展示入る前の追悼の間、犠牲者への追悼を最初に置きました。これは当館の主な目的(犠牲者追悼記念館)を表現しています。

 第三に、展示品は、館内の各コーナーに配置されています。

 各コーナーは主として「侵略戦争の始まり」⇒「南京戦」⇒「大虐殺」⇒「生存者・外国人の証言」⇒「戦後裁判」⇒「館の運営」という流れで構成されています。

 「侵略戦争の始まり」と「南京戦」では、中国部隊の命令書、日本側の写真帖など。

 「大虐殺」では、日本軍の証言・日記、日本側が撮った現場の写真、当館内で発見された犠牲者の遺骨(これは、当館が2006年4月に新館の建設に着工した際、偶然発見されたものです。現在、この「遺骨遺跡」は発見された当時の状態のまま、新館内で展示されています)、埋葬記録など。

 「生存者・外国人の証言」では、生存者たちへの調査記録、当時の外国報道、南京に滞在していた外国人のインタビューなど。

 「戦後裁判」では、法廷の判決文、証人の証言など。

 「館の運営」では、世界から訪れる方々の写真、メッセージなどの展示品があります。

 

3)最後に

 当館自体の本来の目的は「歴史」と「平和」にあります。日本の方々には、当館=南京大虐殺の歴史というイメージがあると思います。しかし、展示室を出られた後、当館敷地内の平和公園を最後まで見ていただき、中国と日本、そして世界の平和友好を願う当館のメッセージを受け取っていただきたいと思います。

 

 なお、当館HPでは、VRで館内ツアーができます。矢印やパネルにクリックしていただくと前に進めます。ただし、ツアーガイドはありません。また、展示パネルは拡大できますが、日本語部分は小さくて、読み取れない箇所もあります。その点はあらかじめご了承ください。

 VRでの館内ツアーはこちらから→http://www.19371213.com.cn/exhibition/njdtsssz/